さまざまな障害
障害の社会モデルについて


国連の障害者権利条約では「障害」を「機能障害を有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用であって、これらの者が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものによって生ずる」としています。この考え方では、当事者と障壁との間の「相互作用」がポイントですので、当事者の心身の機能障害のみに着目することはありません。
障害の社会モデルでは、一般的に4つの障壁(バリア)があると言われています。物理的なバリア、制度的なバリア、文化・情報面のバリア、意識上のバリアの4つです。
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物理的なバリアは、電車やバスなどの交通機関、道路や建物などのバリアを指していて、特に肢体不自由や重症心身障害、視覚障害の方にとって大きなバリアとなっています。
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制度的なバリアは、社会のルールや制度によってその人が持っている力を出す機会を奪われていることを指しています。
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文化・情報面でのバリアは、必要な情報が届かない人がいることを指していて、特に視覚障害や聴覚障害の方にとって大きなバリアとなっています。
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意識上のバリアは、差別や偏見、無関心がもとになったバリアを指しています。
4つのバリアのうち、制度的なバリアと意識上のバリアの2つは、障害に対する無知や偏見、無理解、頑なな考え方がもとになっていることが多く、様々な障害にとってバリアとなっています。バリアの解消には、まだまだ時間がかかりそうです。
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重症心身障害について
重度の身体障害と重度の知的発達障害とが重複した状態を重症心身障害といい、一般的に大島分類の1〜4に分類されます。これは医学的診断名ではなく、行政上の定義です。推定人数は、人口に対して0.034%といわれ、全国では約43,000人、東京都では約4,600人と推定されます。
呼吸機能、心機能、腎機能、摂食、体温調節等、生命維持に関わる障害や、体の変形、拘縮、筋緊張が多く見られます。移動、排泄、食事等生活全般で介助を要し、言語によるコミュニケーションは困難で、多くの人は表情や発声で気持ちを表出します。
重症心身障害児者の多くは、たんの吸引や経管栄養、人工呼吸器等の医療的ケアを必要とします。医療的ケアは医師の許可により、家族や介護者等が行う生活支援行為です。
それぞれの医療的ケアには判定スコア*が設定されていて、スコアの合計が25以上の超重症児、10以上25未満の準超重症児といわれる人も在宅で生活しています。
どんなに重い障害がある人でも必ず内に秘めた能力を持っています。適切な支援を受けることで豊かに生きることのできる社会の実現を願っています。
(*クリックすると判定スコアの表が開きます。)

大島の分類(1971年)

肢体不自由について
肢体とは、四肢(上肢・下肢)、体幹(腹筋・背筋・胸襟・足の筋肉を含む胴体の部分)などのからだのことです。肢体不自由とは、先天性の場合や病気やケガにより、からだのどこかが「動かない」「動かすのが大変」「動かそうとしても思うように動かせない」といった状態により、「立つ」「座る」「歩く」「食事」「着替え」「物の持ち運び」「字を書く」など日常的な動作が困難であることを言います。からだを動かすための脳からの信号を受けられないために、言葉を話したり理解することが難しい障害「失語症」や、自分の意志と関係なく体が動いてしまう「不随意運動」などもあります。
困っていることとサポートしてほしいこと
階段や歩道など段差をこえることが大変です!
小さな段差でも、車椅子の人にとっては一苦労。困っている様子を見かけたら、ひと声かけてから、お手伝いをしましょう。また、エレベーターやスロープのある場所へ案内しましょう

部屋が寒いと感じても体温調整が出来ないことがあります!
一定の体温を維持することが困難な方がいます。自分が適温だと思っていても「寒くないですか?」などと確認をするようにしましょう。

コミュニケーションを取るのが大変なことがあります!
発声に関わる器官の麻痺や不随意運動、失語症などにより、コミュニケーションをとるのが困難な方がいます。相手の話していることが分かりにくい場合は、分かったふりをせず、確認しながら聞きましょう。


視覚障害について
ひとことで視覚障害と言っても、様々な見え方があります。まったく見えない、文字等がぼやけて読めない、物が半分しか見えない、望遠鏡を通しているようにしか見えないなどです。そのため、文字を読むことはできるのに歩いているときに障害物にぶつかってしまう方や、障害物を避けてぶつからずに歩くことはできても文字は読めない方もいます
こんなことに困っています



「白杖(はくじょう)SOSシグナル」をご存知ですか?
「白杖SOSシグナル」とは、視覚障害者が困ったときのSOSの合図です。手にした白杖を垂直に頭上約50センチ上方に上げる事で、「お手伝いをお願いします」と表現します。
全国でも、この白杖SOSシグナル運動が少しずつ広がってきています。
見かけられた際には、「お困りですか?」「ご案内しましょうか?」と必ず先に声をかけて下さい。いきなり手をつかんだり、身体に触られるとビックリしてしまいます。忙しい時や声をかける事は勇気が必要だと思いますが、ご理解頂き、ご支援を宜しくお願いします。


聴覚障害について
何らかの原因で聴覚機能に障害があることにより、全く聞こえない場合と、聞こえにくい場合があります。
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音や音声が聞こえない、聞こえにくいです
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聴覚障害であることが、見た目では周囲の人にわかりにくいです
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コミュニケーション障害ともいわれています
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手話で会話する人もいますが、手話を使わない聴覚障害者もいます
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文書が苦手な人もいます。
こんなことに困っています
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後ろから話しかけられたり、自転車のベル、車のクラクションに気づかないこともあります。
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駅や空港、乗り物などの交通機関や公共の場での音声情報が伝わりません。
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防災無線は気づかず、テレビやラジオなどはきこえません。
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暗いところでは手話が見えないので話ができません。
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電話ができません。

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やさしく肩をたたいてきづかせてください
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手話や筆談で伝えてください
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自転車や車を運転するときは、聞こえない人がいることも知っておいてください。
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音声情報は、手話や文字、図・パネルなど見てわかる方法で伝えてください
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手話が見える明るさで話をしてください。
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FAXやメールで連絡をしてください。
こんな助けが必要です

きこえない人に合った会話の方法

一人ひとりのコミュニケーション手段はまちまちです。相手の希望するコミュニケーション手段でやりとりしましょう。
「手話言語」は独自の文法を持つ言語であるということをご存じでしょうか。日本語や英語が音声言語であるのに対し、手話言語は、手や指、顔の表情などを使った視覚言語であり、音声言語とは異なる文法体系を持った独自の言語です。

指文字

知的障害について
脳の知的機能障害で、知的機能(IQ)が70 未満、認知機能全般が遅れた状態に留まり、発達期(18 歳頃まで)に現れます。染色体の異常(ダウン症等)、頭部外傷、疾病の後遺症等、原因が分かることもありますが、大半は原因不明です。また、自閉症、脳性マヒ、てんかん、ADHD 等の障害との併存も多いです。
主な特徴は「抽象的な表現の理解や考えを伝えることが苦手」「初めてのことや急な変化等、状況に応じた対応が困難」ということです。障害の重軽はIQ と適応能力、衛生面、行動面で判断され、現れ方は十人十色です。常時見守りが必要な重い方がいる一方、経験を重ねる中で単身でも生活できる軽い方もいますが、社会生活を続けるには周囲の支援は不可欠です。

知的障害のある人と接する時は、「ゆっくり・やさしく」
でも内容は「ハッキリ・短く・具体的」に話かけてください。
ダウン症について
ダウン症は、細胞の中にある23対の染色体のうち21番目の染色体が1本多い状態を指します。昔から世界中にいて、イギリス人のダウン博士が発見したことから、名付けられました。「下がる」の「ダウン」ではありません。一部のタイプを除くと遺伝は関係なく、600~800人に1人生まれてきます。
知的な遅れや心臓疾患などの合併症を伴うことが多いですが、今は医療の進歩でほとんどの人が普通に日常生活を送っています。社交的で音楽が好きな人が多く、書道家やタレント、モデル活動をしている人もいます。

内部障害について
(オストメイト)
様々な病気や事故などにより、お腹に排泄のための『ストーマ』(人工肛門・人工膀胱)を造設した人を『オストメイト(Ostomate)』と言います。

精神障害について
精神障害者とは、統合失調症、うつ病、双極性障害、発達障害などの精神疾患から生じる障害のことと言われています。精神疾患から生じた障害により、感情のコントロールができなくなったり、日常生活や社会参加に困難をきたしたり、悪化すると周りのサポートが必要になります。
日本では長い間、精神障害者を病院に長期入院させてきました。しかし、そのような精神医療は、世界から非難されております。
現在はようやく日本も、病院から地域へと変わりつつありますが、それにはグループホームや訪問看護などの地域の受け皿が必要となります。
家族だけで支えるには限界があり、国や地域の支援が必要です。皆様のご理解が深まれば、当事者の社会復帰の可能性も広がります。


発達障害について
発達障害は、 脳機能の発達が関係する障害です。
発達障害がある人は、 コミュニケーションや対人関係をつくるのが苦手です。 また、 その行動や態度は 「自分勝手」 とか 「変わった人」 「困った人」 と誤解され、 敬遠されることも少なくありません。 その原因が、 親のしつけや教育の問題ではなく、 脳機能の障害によるものだと周囲の人が理解すれば、 接しかたも変わってくるのではないでしょうか。
ここでは、 発達障害のある人を理解するために、 自閉症、 アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、 学習障害、 注意欠陥多動性障害など、 主な発達障害の特徴を紹介します。なお、 発達障害は、 複数の障害が重なって現われることもありますし、 障害の程度や年齢 発達段階、 生活環境などによっても症状は違ってきます。 発達障害は多様であることをご理解ください。
◆広汎性発達障害
コミュニケーション能力や社会性に関連する脳の領域に関係する発達障害の総称です。 自閉症、 アスペルガー症候群のほか、 レット症候群、 小児期崩壊性障害、 特定不能の広汎性発達障害を含みます。
◆自閉症
自閉症は、 「言葉の発達の遅れ」 「コミュニケーションの障害」「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、 こだわり」 などの特徴をもつ障害です。
◆アスペルガー症候群
アスペルガー症候群は広い意味での 「自閉症」 に含まれる一つのタイプで、 「コミュニケーションの障害」 「対人関係・社会性の障害」「パターン化した行動、 興味・関心のかたより」があります。 自閉症のように、 幼児期に言葉の発達の遅れがないため、 障害があることが分かりにくいのですが、 成長とともに不器用さがはっきりすることが特徴です。
◆注意欠陥多動性障害(AD/HD)
注意欠陥多動性障害
(AD/HD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、 「集中できない (不注意)」 「じっとしていられない(多動・多弁)」 「考えるよりも先に動く (衝動的な行動)」 などを特徴する発達障害です。
◆学習障害(LD)
学習障害(LD:Learning DisordersまたはLearning Disabilities)とは、 全般的な知的発達に遅れはないのに、 聞く、 話す、 読む、 書く、 計算する、 推論するなどの特定の能力を学んだり、 行ったりすることに著しい困難を示すさまざまな状態をいいます。
◆トゥレット症候群
トゥレット症候群(TS:Tourette's Syndrome)は、 多種類の運動チック 突然に起こる素早い運動の繰り返し と一つ以上の音声チック 運動チックと同様の特徴を持つ発声 が1年以上にわたり続く重症なチック障害で、 このような運動や発声を、 本人はそうするつもりがないのに行ってしまうのが特徴です。
◆吃音(症)
吃音(Stuttering)とは、 音の繰り返し、 ひき伸ばし、 言葉を出せずに間があいてしまうなど、 一般に 「どもる」 と言われる話しかたの障害です。 幼児・児童期に出始めるタイプ (発達性吃音) がほとんどで、 大半は自然に症状が消失したり軽くなったりします。 しかし、 青年・成人期まで持続したり、 青年期から目立つようになる人や、 自分の名前が言えなかったり、 電話で話せなくて悩む人もいます。
上記は政府広報オンライン 「発達障害ってなんだろう?」 より抜粋しての引用です。 全体の詳しい内容を知りたい方は、
https://www.gov-online.go.jp/featured/201104/
また成人向けとして 「大人になって気づく発達障害 お互いに働きやすい職場づくりのために」 は、
https://www.gov-online.go.jp/prg/prg26286.html
なお、 他の障害 (例えば、 脳性麻痺など) と併存する場合もあり、 特性の組み合わせにより、 各々の障害の程度は軽くても、 社会生活が困難になる場合があります。
また、 発達障害をもちながら、 社会の中で適切な支援が受けられずに過ごすことにより、適応障害やうつ病等を発症する方もいる様ですが、 それを発達障害の二次障害と言ったりもします。